2026.08.26
R410AとR32の大きな違いは、冷媒の構成、地球温暖化係数、燃焼性、安全区分です。R32はR410Aより地球温暖化係数が低い一方、微燃性を考慮した設計・施工が必要です。
主な違いを比較すると、次のようになります。

R32はR410Aの構成成分の一つですが、「R410A機にもR32を使用できる」という意味ではありません。機器ごとに指定された冷媒を使用することが原則です。
冷媒は、室内機と室外機の間を循環しながら熱を運ぶ物質です。冷媒の量や状態に問題があると、能力低下や消費エネルギーの増加、機器故障につながります。
業務用空調は、冷媒を圧縮・凝縮・膨張・蒸発させることで、建物内と屋外の間で熱を移動させています。
冷房運転では、室内の熱を冷媒が受け取り、室外機から屋外へ放出します。暖房運転では反対に、屋外から取り込んだ熱を室内へ運びます。
GHPとEHPではコンプレッサーを駆動する方法が異なります。GHPはガスエンジン、EHPは電気モーターを使用しますが、冷媒を循環させて熱を移動させる基本原理は共通です。
両方式の特徴を詳しく比較したい方は、GHPとEHPの違い もご覧ください。
冷媒は密閉された配管内を循環するため、正常な状態であれば運転するたびに減るものではありません。
冷媒不足が確認された場合は、単純に補充するだけでなく、次のような箇所から漏れていないか調査する必要があります。

漏えい箇所を修理しないまま補充すると、再び冷媒が減少する可能性があります。効きが悪い、配管に霜が付く、エラーが繰り返されるといった症状がある場合は、専門業者による点検が必要です。
R410Aは、R32とR125を組み合わせた混合冷媒です。R22の代替冷媒として、パッケージエアコンやビル用マルチエアコンなどに広く採用されてきました。
R410Aは安全区分A1に分類される不燃性冷媒です。オゾン層破壊係数は0ですが、地球温暖化係数は2,088と高く、環境負荷低減の観点から低GWP冷媒への転換が進められています。
ただし、R410Aを使用していることだけを理由に、現在稼働している業務用空調を直ちに停止・撤去する必要があるわけではありません。
既設のR410A機が、すぐに使用禁止になるわけではありません。正常に運転しており、部品供給や保守体制に問題がなければ、点検・整備を行いながら継続使用できます。
一方で、長期間使用している設備では、次のような問題が重なりやすくなります。

「R410Aだから交換する」のではなく、使用年数や故障履歴、修理費、部品供給、停止時の影響を含めて更新時期を判断することが大切です。
R32は単一成分の冷媒で、地球温暖化係数はR410Aの約3分の1です。環境負荷を抑える冷媒として、業務用パッケージエアコンでも採用が進んでいます。
地球温暖化係数(GWP)とは、二酸化炭素を基準として、温室効果の大きさを示した数値です。
R410AのGWPが2,088であるのに対し、R32は675です。R32に転換することで、万一冷媒が漏えいした場合の地球温暖化への影響を抑えられます。
ただし、業務用空調全体の環境性能や省エネ性は、冷媒だけでは決まりません。機器の効率、能力選定、建物の熱負荷、運転時間、換気量なども影響します。
R32は、安全区分A2Lに分類される微燃性冷媒です。
通常の使用を過度に心配する必要はありませんが、設置・修理・回収を行う際には、冷媒が漏れた場合を想定した安全対策が必要です。
特に、施工時には次のような点を確認します。

地下、機械室、狭いバックヤードなどでは、冷媒が漏れた際に滞留しないよう、設置条件を事前に確認することが重要です。
R32を採用している機器でも、能力選定や設置計画が不適切であれば、期待した省エネ効果を得られないことがあります。
たとえば、工場では製造機器からの発熱、飲食店では厨房の熱気、オフィスでは在室人数やOA機器、病院では換気量や24時間運転の有無などを考慮しなければなりません。
業務用空調の能力は床面積だけで決めず、用途や熱負荷を含めて選定する必要があります。業務用エアコンの馬力と施設別の選び方 も、能力選定の参考にしてください。
R410A機へR32を充填したり、R410AとR32を混ぜたりすることはできません。R32へ転換する場合は、原則としてR32対応機への設備更新が必要です。
R410Aの構成成分にはR32が含まれていますが、両者は異なる冷媒です。次のような設計条件が異なるため、指定外冷媒への入れ替えはできません。

指定されていない冷媒を使用すると、空調能力の低下、異常圧力、圧縮機の損傷などを招くおそれがあります。安全上の問題にもつながるため、冷媒の自己判断による混合や入れ替えは行ってはいけません。
使用冷媒は、室外機の銘板、取扱説明書、完成図書などに記載されています。
複数の空調系統がある施設では、次の情報を設備台帳に整理しておくと、点検や更新計画を立てやすくなります。

冷媒の種類がわからない場合は、室外機の型番を控え、空調設備会社へ確認しましょう。
業務用空調の撤去・廃棄では、冷媒を大気中へ放出することは禁止されています。フロン排出抑制法などに基づき、資格・知識のある事業者による適切な回収と処理が必要です。
また、第一種特定製品に該当する業務用冷凍空調機器の管理者には簡易点検が求められ、一定規模以上の機器には有資格者等による定期点検も必要です。対象や点検頻度は機器の種類・定格出力によって異なります。
法令対応や漏えい管理については、GHPフロン点検の重要性と義務化内容 で詳しく解説しています。
R410A機からR32機へ更新する際、既設の冷媒配管を再利用できる場合があります。ただし、配管径や肉厚、劣化状態、過去の故障履歴、メーカーの再利用基準を満たすことが条件です。
冷媒配管には、機器の能力や冷媒特性に応じた径と肉厚が指定されています。
既設配管が新しいR32機のメーカー仕様を満たしていない場合、そのまま再利用することはできません。配管長や高低差、分岐管の仕様についても確認が必要です。
配管につぶれ、折れ、腐食、接続部の劣化があると、能力低下や冷媒漏えいにつながります。
天井内や壁内を通る配管は外から状態を判断しにくいため、目視だけでなく気密試験などを行い、再利用の可否を判断します。
既設機器で圧縮機の焼損などが発生していた場合、配管内に異物や劣化した冷凍機油が残っている可能性があります。
そのまま新しい機器へ接続すると故障の原因になるため、故障履歴によっては配管洗浄または配管の新設が必要です。
既設配管を再利用できる条件はメーカーや機種によって異なります。
気密試験、真空乾燥、フレア部の再加工、断熱材の確認など、メーカーが定めた施工手順を守る必要があります。「R410AからR32への更新なら必ず流用できる」とは限りません。
既設配管を再利用できれば、天井解体などの工事範囲を抑え、工期短縮や費用削減につながる可能性があります。
一方、古い配管を再利用すると、更新後に漏えいが発生するリスクが残ることもあります。次回更新時の施工性や保守性も考え、配管を再利用する案と新設する案を比較することが大切です。
業務用空調の更新では、機器の仕様だけでなく工事中の空調停止が事業へ与える影響も確認します。
施設を一度に停止できない場合は、次のような施工計画を検討します。

夏や冬に故障してから緊急交換する場合、希望機種の在庫や施工業者の手配が間に合わない可能性があります。設備が稼働しているうちに、現地調査と更新計画を進めることが重要です。
修理か更新かは、冷媒の種類だけでなく、使用年数、運転時間、故障内容、部品供給、修理費、空調停止による事業リスクを含めて判断します。
設置からの年数が比較的短く、不具合箇所が限定され、補修部品を確保できる場合は修理を検討できます。
ただし、冷媒不足がある場合は、単なる補充ではなく漏えい箇所の特定と修理が必要です。また、修理後も別の部品が続けて故障する可能性がないか、機器全体の状態を確認することが大切です。
次のような状況では、修理を繰り返すより設備更新が適している可能性があります。

具体的な故障症状と費用を確認したい場合は、業務用エアコンの修理費用と修理前の確認ポイント も参考にしてください。
業務用空調では、本体価格や工事費だけを比較すると、適切な更新判断ができないことがあります。
設備の使用期間全体を考え、次の費用とリスクを総合的に比較しましょう。

特に工場、病院、厨房、店舗など、空調停止が事業継続に直結する施設では、「まだ動いているから使い続ける」だけでなく、停止した場合の影響まで含めた判断が必要です。
R410A機からR32機への更新では、機器本体だけでなく、配管、電源、設置環境、搬入経路、工事中の停止時間まで調査できる設備会社への相談が重要です。
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必要な空調能力や運転条件は、施設用途によって大きく異なります。
工場であれば製造設備の発熱や稼働時間、病院であれば換気量や室温管理、店舗であれば来客数や営業時間、厨房であれば熱気・油・換気設備とのバランスまで確認する必要があります。
既設機器と同じ能力・方式で単純に入れ替えるのではなく、現在の使い方や将来の運用まで踏まえた計画が重要です。
既設設備と同じ方式へ更新することが、必ずしも最適とは限りません。
受電設備の容量、ガス設備、デマンド電力、運転時間、保守体制、災害時の運用などを確認し、GHPとEHPのどちらが適しているかを比較します。大型施設では、吸収冷温水機やチラーを含めた検討が必要になる場合もあります。
R410AとR32の主な違いは、次のとおりです。

R410A機が直ちに使用できなくなるわけではありません。しかし、長期間使用している設備では、部品供給や冷媒漏えい、修理費、エネルギー効率、突然の停止リスクを含めた検討が必要です。
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