2023.12.15
夏の暑さや冬の寒さといった季節ごとの気温差。特に近年の夏季の猛暑は、生命を脅かす程の危険となっています。そんな気候に対して快適な室温を保つ設備であるエアコンは、もはや現代では必須の装置といっても過言ではないでしょう。
エアコンは日常生活を送る家庭でも用いられますが、あらゆる商業施設や店舗等でも設置されるのが一般的です。では、家庭用のエアコンと業務用のエアコンにはどのような違いがあるのでしょうか。
本記事では業務用エアコンの馬力に関するトピックを中心に、シーン別に適切なエアコンの性能・馬力の選び方について解説します。
はじめに、業務用エアコンの「馬力」について確認しましょう。馬力といえば機械動力や車・バイクなどのエンジン出力を表す単位として使われるのが一般的です。
そもそも馬力とは「どの程度の重さのものをどれ位の時間でどれだけの距離を動かせるか」を示すものです。単位に「馬」とつくように馬が継続的に荷を引くことのできる作業率を基準にしているとされ、1馬力はおおむね1秒間に75㎏の物を1m動かす力を指しています。
業務用エアコンの性能を示す単位にも「馬力」が使われます。ただし業務用エアコンが指す馬力は、「75kgの物を動かす力(=仕事率)」ではなく、冷房・暖房能力です。メーカーによっては、家庭用エアコンに合わせて「kW」で表記することもあります。
「馬力」という単位は、家庭用のエアコンではまず耳にしない言葉ですが、業務用エアコンのパワー性能や空調能力を表現するために用いられているのです。
単位が違うことからも分かるように、業務用エアコンと家庭用エアコンはパワーや性能が大きく異なります。
一般的に業務用エアコンは1.5~12馬力までの幅があります。畳数で置き換えると14畳~176畳もの広さに対応できるパワーです。一方、家庭用エアコンは0.5~3馬力程度といわれています。畳数に換算すると5畳~30畳程度なので、いかに業務用エアコンの出力が高いかが分かります。
ただしそこまで広くないオフィスであれば、家庭用エアコンでも良いのではと考える方もいるでしょう。ここで重要なのが「空調負荷」という要因です。
空調負荷とは、空間内を出入りする熱量とそこで発生する熱量によって、エアコンなどの空調設備に求められる出力が変動することを表しています。
例えば頻繁に来客が出入りする店舗やOA機器が常時稼働しているオフィス、厨房を備えて火を使用する飲食店など、業種・業態によってその空間の空調負荷は異なります。
家庭用エアコンでも、広さに合ったものを選べば使用すること自体は可能です。ただし、こういった空調負荷にも負けずに室温をキープできる性能やパワーを重視するのであれば、業務用エアコンが望ましいでしょう。
業務用エアコンは、1馬力でどの程度の広さに対応する能力があるのでしょうか。
一般に業務用エアコンの1馬力は約2.8kwとされており、これは家庭用エアコンに換算すると8~10畳用程度の出力に相当します。
ただし家庭用エアコンと違って、業務用エアコンは空調負荷や建物の造りによって対応する広さが変わります。そのため、1馬力当たりの広さはあくまで目安として考えましょう。
業務用エアコンの消費電力は、先述の通り1馬力=2.8kWです。空調能力を指すので、一般的に馬力が大きくなればなるほど強いパワーで空間の温度を調整することができます。ただし、消費電力も上がるので家庭用エアコンよりも維持費がかかるといわれています。
また、業務用エアコンでは赤外線センサーで室内の空調を最適化・効率化する機能や自動的にフィルターを清掃する機能などハイスペックな機構が搭載されているケースも珍しくありません。
こうした機能がフル活用されると、通常運転時よりも電力の消費量は大きくなるでしょう。
業務用エアコンを選ぶ際は広さと同様に、事業所や店舗の環境、あるいは使用する時間帯によっても電力の消費量が異なるため、単純に「業務用エアコン1馬力の消費電力」で選ぶのは難しいといえるでしょう。
上記の2.8kwはあくまでも一つの目安であり、シチュエーションごとに細かい差異があると認識しておくことがポイントです。
次に業務用エアコンの適切な馬力の選び方を、シーン別に見ていきましょう。
ここでは事業所や店舗のシチュエーションを4つ挙げ、冷房時における9パターンの広さを仮定してそれぞれに適した業務用エアコンの馬力の目安を解説します。
冷房時の広さ(単位:㎡) |
---|
17~38 |
20~43 |
22~48 |
24~53 |
27~60 |
35~76 |
49~107 |
61~133 |
70~152 |
エアコンの冷房最大能力(単位:馬力) |
---|
1.5 |
1.8 |
2 |
2.3 |
2.5 |
3 |
4 |
5 |
6 |
ここでいう「オフィス」とはデスクワーク等が主体の事業所を指し、人の動きや出入りが比較的少ないシチュエーションでのエアコン利用を想定しています。
そのため事務所や商社などの一般企業オフィスをはじめ病院・薬局・老人ホームなどの医療・介護施設、学校・幼稚園・保育園・塾などの教育機関、銀行・寮・スタジオなど静的な商業施設が挙げられます。
室内の障害物や人の移動は少ないものの、OA機器類が放出する熱が空調負荷のネックになると予想されます。
※参考:ダイキンプロショップ. 「業務用エアコンの馬力(能力)を選ぶ目安とは?」. https://proshop.ac.daikin.co.jp/business/useful/select/1101_4.html , (2023-11-10).
冷房時の広さ(単位:㎡) |
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17~38 |
20~43 |
22~48 |
24~53 |
27~60 |
35~76 |
49~107 |
61~133 |
70~152 |
エアコンの冷房最大能力(単位:馬力) |
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1.5 |
1.8 |
2 |
2.3 |
2.5 |
3 |
4 |
5 |
6 |
一般的な商店とはスーパーや中小規模のマーケット、商店やショールームなどある程度の人的な流動があり相応の室内空間を必要とする業態を想定しています。
室内の広さに加えて設備の障害物が多いことから、空調負荷は一般企業等のオフィス並となることが特徴です。
また、スーパーマーケットの生鮮食品や冷蔵ショーケースを設置する業態ではさらに空調負荷が高まり、空調効率には複雑かつ緻密な計算が必要となります。
多くの人が常に出入りすることも前提であるため、特に盛夏期や厳冬期の空調負荷は高くなる傾向があります。
※参考:ダイキンプロショップ. 「業務用エアコンの馬力(能力)を選ぶ目安 とは?」. https://proshop.ac.daikin.co.jp/business/useful/select/1101_4.html , (2023-11-10).
冷房時の広さ(単位:㎡) |
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14~17 |
16~20 |
17~22 |
19~24 |
22~27 |
28~35 |
39~49 |
48~61 |
55~70 |
エアコンの冷房最大能力(単位:馬力) |
---|
1.5 |
1.8 |
2 |
2.3 |
2.5 |
3 |
4 |
5 |
6 |
理容店や美容院では、顧客が長時間同じ姿勢で同じ場所にいるという点が他の店舗にはない大きな特徴です。
従って空調設備に求められるのは大出力そのものではなく、常時快適な温度を保つ性能といえるでしょう。
同様の理由から他にもカフェや喫茶店、バーやスナック等々、顧客がある程度の時間をその場で過ごす業態では理容店・美容院に準じた業務用エアコンの設置が望まれます。
エアコンの風が直接顧客に当たらないよう調整したり、室内空間における人の密集度を感知して温度を最適化したりする性能を有する機種がおすすめです。
※参考:ダイキンプロショップ. 「業務用エアコンの馬力(能力)を選ぶ目安 とは?」. https://proshop.ac.daikin.co.jp/business/useful/select/1101_4.html , (2023-11-10).
冷房時の広さ(単位:㎡) |
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11~21 |
12~24 |
14~26 |
15~29 |
17~33 |
22~42 |
30~59 |
38~74 |
43~84 |
エアコンの冷房最大能力(単位:馬力) |
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1.5 |
1.8 |
2 |
2.3 |
2.5 |
3 |
4 |
5 |
6 |
飲食店はレストラン・居酒屋・焼肉店・ファーストフード店・ラーメン店などが想定され、料理を行う厨房での熱源が大きな空調負荷になる業態です。
特にお好み焼きやもんじゃ焼き、焼肉や焼鳥などの店舗では、客席の間近に炭火や電熱などの熱源が集中するため、業務用エアコンの馬力については例示した4業態の中で最も高い出力が求められます。
また上記以外にも火熱や煙を排気する必要があることから、室内の空気を常に外へと送るために、定期的な換気を行ったり換気機能の設備を導入したりする必要があります。外気温との差が大きい真冬などは、換気によって冷気が入り込むことも空調負荷になりうるので、注意が必要です。
飲食店では、全体的な設備や調理方法、場所を加味した上で機種を選定する必要があります。
※参考:ダイキンプロショップ. 「業務用エアコンの馬力(能力)を選ぶ目安 とは?」. https://proshop.ac.daikin.co.jp/business/useful/select/1101_4.html , (2023-11-10).
業務用エアコンについて各業態の店舗空間に適した馬力を解説しましたが、ここでその重要性についておさらいしましょう。
なぜ適切な馬力の業務用エアコンを選ぶべきなのかという理由について、代表的かつ根本的な2つの根拠を見ていきます。
業種・業態など使用するシチュエーションや室内空間の広さによって適した業務用エアコンを選ぶことは、省エネや電気代の節約に直結します。
仮に出力性能が不足したエアコンを無理に稼働させると、いつまでたっても設定温度にならず消費電力が過剰になりがちです。逆にオーバースペックな機種を使用しても無駄な電力を消費し続けることになりかねません。
店舗に見合った必要十分の性能を満たす業務用エアコンを選べば、最低限の電力消費に留めて、省エネを推進することも可能です。
前項とも関連しますが、適切な馬力の業務用エアコンを選ぶことは機種本体の寿命にも影響します。
特に店舗に見合わない性能で無理な運転・稼働を続けるとそれだけエアコンに負荷がかかり、早期にダメージが蓄積して故障の原因になるおそれがあります。
効率的な稼働を行えば、カタログスペックなどで想定される期間以上の寿命で使用できることもあるため、エアコンの保守も考慮した上で適切な馬力のものを選びましょう。
業務用エアコンで用いられる馬力について、解説しました。業務用と家庭用のエアコンは性能やパワーが大きく異なるため、快適な空間を作るのであれば業務用エアコンがおすすめです。どのような機種や馬力が適しているのか分からないという方は、シーン別の選び方を参考にしてみてください。
ただし、業務用エアコンは店舗の広さだけではなく、業種に応じた空調負荷を考慮して選ぶ必要があります。オフィスや店舗の業務用エアコンでお困りなら、ミヨシテックへご相談ください。
ミヨシテックでは、ガスや電気の業務用エアコンの設置・更新・移設工事や修理・点検を承っています。建物に合ったプランをご提案しますので、お気軽にお問い合わせください。