受水槽ライニング工事とは?劣化の症状・改善効果・ポンプ更新まで徹底解説

業務用設備工事

2025.12.11

Column

見えないところで進む、受水槽の老朽化リスク

建物で使われる水の多くは、まず受水槽に蓄えられ、そこから各フロアや設備へ送られています。マンション・工場・病院・商業施設など、あらゆる建物にとって受水槽はまさに“水の心臓部”です。

しかし、コンクリート製の受水槽は年月とともに劣化が進み、次のようなトラブルを引き起こす可能性があります。

 

  • クラック(ひび割れ)や内面の剥離
  • 漏水や結露による周囲設備へのダメージ
  • 赤水・異物混入などの水質悪化
  • 劣化に伴いポンプへ負荷がかかることで故障リスクが上昇

特に受水槽は普段見る機会が少なく、内部は利用者の目に触れません。そのため、外見上は問題なく見えていても「気づいた時には深刻化していた」というケースが珍しくありません。

こうしたリスクを未然に防ぐために有効なのが、受水槽防水工事(内面ライニング工事)です。劣化したコンクリートを保護し、水槽を再生させることで、建物全体の“水の安全性”を長く維持できるようになります。

そもそも受水槽防水工事(内面ライニング)とは?

受水槽防水工事(内面ライニング工事)とは、劣化したコンクリート製の受水槽内部に、防水性・防食性に優れたコーティング材を塗布し、水槽の機能を“再生”する工法です。
コンクリート素地のまま長年使用していると、常に水と接触している事と、清掃などで空気に触れることで劣化、水質トラブルや漏水の原因となります。ライニング工事は、こうした問題を根本から防ぐために行われます。

コンクリート素地のまま放置すると起きやすい問題

  • コンクリート片の剥落による水質悪化(赤水・異物混入)
  • 水槽内部のクラックにからの浸透による鉄筋腐食
  • 表面粗度が高いため汚れが付着しやすく、衛生管理が難しい

特に築20年以上の建物では、内部で劣化が静かに進行しているケースが多く、定期点検で初めて症状が見つかることもあります。

内面ライニング工事の役割とは

ライニング工事では、専用のライニング材を数回に分けて塗り重ね、十分な膜厚を確保します。これにより、コンクリート面が水と完全に遮断され、次の効果が得られます。

  • 水槽の長寿命化(延命効果)
  • 水質保全(赤水・異物混入の防止)
  • 漏水トラブルの予防
  • 清掃性・衛生性の向上
  • 将来的な補修コストの抑制

交換工事のように大規模な土木・設備工事が不要なため、既存水槽を活かしながら性能を回復できる点も大きなメリットです。

どんな時に検討すべき?(判断ポイント)

  • 年次点検でひび割れ・剥離が確認された
  • 水質検査で不純物や色付きの指摘が続く
  • 受水槽内部の汚れが取れにくい
  • 築20年以上で、これまで大規模補修をしていない
  • 水槽交換が難しく、延命措置が必要

こうした状況であれば、ライニング工事は非常に有効な選択肢となります。

受水槽だけじゃ不十分?ポンプ室更新もセットで考える理由

受水槽の防水工事を行うと、水槽は「新築同様」の状態に生まれ変わります。しかし、建物の給水設備は受水槽だけで完結していません。受水槽で蓄えた水を、建物の各フロアへ送り出す役割を担っているのが加圧ポンプユニットや周辺配管・電気設備です。

そのため、受水槽がいくら健全でも、ポンプ設備が老朽化している場合、以下のような“給水トラブル”が残ってしまうことがあります。

  • 水圧が不安定になり、上階で水が弱くなる
  • ポンプの異音・振動が大きくなる
  • 部品劣化による突発的な停止(断水リスク)
  • 効率低下による電気代の増加
  • 漏水・逆流・電極不良など、監視設備の誤作動

受水槽の改修をしても、ポンプや配管が限界を迎えていると、肝心の“快適な水利用”が実現できません。

受水槽工事とポンプ室設備工事を同時に行うメリット

今回のように、受水槽防水工事とポンプユニット更新をセットで実施すると、設備全体が一度にリフレッシュされ、以下の効果が得られます。

  • 水槽もポンプも新品同様になり、給水設備全体の信頼性が向上
  • 動力・電極・設備監視などの電気設備を同時更新するため、トラブルを早期発見できる体制に
  • 給排水管の腐食リスクが減り、漏水・赤水の予防につながる
  • 工事期間をまとめることで、断水時間が最小限に
  • メンテナンス性が向上し、毎年の点検・清掃がスムーズになる

受水槽とポンプは“ワンセット”の設備。どちらか一方だけを更新しても、設備としての真価は発揮できません。
建物の給水インフラを長期的に守るためには、今回のような総合的な更新が最も効果的です。

施工事例紹介 ― 25m³×2槽+11.5m³×2槽の受水槽ライニング工事

今回ご紹介するのは、敷地内に大型受水槽を複数持つ施設で実施した「受水槽防水工事(内面ライニング)」と「ポンプ室設備工事」の総合改修です。
受水槽は 25m³×2槽、11.5m³×2槽 の計4槽という規模で、長年使用されてきたコンクリート素地のままの状態でした。

施工前の課題

現地調査の結果、以下のような課題が確認されました。

  • 受水槽内壁がコンクリート素地のままで、経年による劣化が進行
  • クラックや表層剥離の兆候があり、水質リスクが高まっている状態
  • 配管・電気設備も更新時期を迎えており、設備全体を同時に見直す必要性があった

水槽・ポンプ・配管・監視設備のすべてに劣化症状が確認されたため、部分修繕ではなく総合的な更新工事として計画を立案しました。

施工内容一覧

今回実施した主な工事は以下の通りです。

  • 受水槽防水工事(内面ライニング工事)
  • ポンプ室設備工事
  • ポンプユニット取替に伴う動力・電極・設備監視の各電気設備工事
  • 給排水管の更新工事
  • ポンプ室内の照明・換気扇の更新

更新前は

  • 受水槽:コンクリート素地
  • ポンプ:加圧ポンプ・非常時用エンジンポンプ

施工後は

  • 受水槽:内面ライニング施工済み
  • ポンプ:加圧式ポンプユニットへ更新
  • 配管・電気設備:更新

と、設備全体が大幅にリニューアルされました。

■ 工期:約4ヶ月 ― 稼働を止められない施設での計画施工

水槽やポンプ室の工事は、建物の給水を止める必要があるため、綿密な計画が欠かせません。
今回は複数槽を切り替えながら工事を進めることで、日常利用への影響を最小限に抑えました。

  • 2槽式の為、片側を活かしつつ施工(断水期間の縮小)
  • 配管切替のタイミングは短時間で実施
  • 試運転期間を設け、安全性と安定性を確認
  • 電気設備工事も同時進行で効率よく施工

これにより、施設の運用を継続しながら、安全に工事を完了できました。

工事後に期待できる効果

今回のように、受水槽の内面ライニング工事とポンプ室設備の総合更新を同時に行うと、給水設備の安全性・信頼性・維持管理性が大きく向上します。建物の規模や用途を問わず、以下のような効果が期待できます。

受水槽まわりの改善効果

漏水リスクの大幅低減

ライニング材によってコンクリート面が水と完全に遮断されるため、ひび割れ箇所からの浸水・漏水を防止します。
長期的に水槽自体の耐久性が向上し、突発的な水槽トラブルを避けられます。

水質トラブルの抑制(赤水・異物混入の防止)

コンクリートの剥離や錆汁が水に混ざるリスクが減り、水質が安定します。
衛生的で透明度の高い状態が維持され、各種水質検査への対応も安心です。

清掃性・衛生性の向上

ライニング後の内面は滑らかで汚れが付着しにくいため、定期清掃がしやすく、衛生状態を保ちやすくなります。
バイオフィルムの発生抑制にもつながります。

ポンプ・配管まわりの改善効果

水圧が安定し、日常利用の快適性が向上

新しい加圧式ポンプユニットは運転制御が優れており、建物全体の水圧が安定します。
高層階でも水が弱くならず、利用者のストレスが減ります。

省エネ性の向上(ランニングコスト削減)

最新ポンプは効率が良く、従来機と比べて消費電力を抑えられます。
長期的には電気代の削減効果も大きく、施設運営コストの見直しにつながります。

故障リスクの低減・安定稼働

老朽化したポンプや配管では、予期せぬ停止や漏水事故が起こりやすくなりますが、総合更新によりトラブルの発生が大幅に減少します。
設備監視の電気設備も刷新したため、異常の早期発見が可能になりました。

メンテナンス性の向上

照明・換気扇の更新により、ポンプ室内の作業環境が改善。
点検時の視認性が高まり、定期点検・修繕がスムーズに行えるようになります。

建物全体としてのメリット

  • 安定した給水が維持され、入居者・利用者の満足度向上
  • 設備の延命と計画的更新によるコストコントロール
  • 管理者の負担軽減・緊急対応の減少
  • 行政の水質基準や点検項目への適合性が高まる

受水槽とポンプ設備の両方を更新することで、建物の“水インフラ”が総合的に強化され、長期的に安全で安定した運用が可能になります。

受水槽・ポンプ設備の点検・更新の目安

受水槽やポンプ設備は、普段目にする機会が少ないため、気づかないうちに劣化が進んでいることがあります。以下のチェックリストは、点検や更新を検討する際の判断材料として役立ちます。

受水槽にこんな症状はありませんか?

  • 内部にひび割れ(クラック)が見える
  • 内面の剥離・浮き・粉化(白華)が発生している
  • 赤水や異物混入など、水質に違和感がある
  • 水槽内の汚れがひどく、清掃しても改善しない
  • 水槽外壁に湿り・シミがあり、漏水の兆候がある
  • 築20年以上で、一度も防水工事をしていない

これらが当てはまる場合、早めに点検を行うことで大きなトラブルを未然に防ぐことができます。

ポンプ室まわりの設備は大丈夫?

  • ポンプから異音・振動が増えてきた
  • 運転が不安定で、水圧が急に弱くなることがある
  • 制御盤や電極装置の劣化が進み、誤作動が増えた
  • ポンプの設置から10〜15年以上経過している
  • 配管に錆・腐食・水漏れが見られる
  • ポンプ室が暗く、照明が古い/換気が悪いなど作業環境が不良

設備は一箇所劣化すると、周辺設備にも負荷がかかり、連鎖的にトラブルが発生しやすくなります。

更新タイミングの目安

  • 受水槽の総合更新:15〜25年
  • ポンプユニット更新:10〜15年
  • 電極・監視設備:15年前後
  • 配管更新:劣化状況に応じて随時

実際は建物の使用状況や水質、環境条件によって変わるため、専門業者による現地調査が最も確実です。

点検だけの依頼も可能です

「工事するかどうか迷っている」「まずは現状を把握したい」という施設でも、点検・診断のみの対応が可能です。
現状を正しく把握することで、計画的な更新ができ、無駄なコストを抑えることにつながります。

まとめ ― 受水槽防水工事+ポンプ室更新で、建物の“水インフラ”をまるごとリフレッシュ

受水槽は建物の水を支える重要な設備ですが、内部が見えないため劣化が発見しにくく、気づいた時には深刻なトラブルへ発展しているケースも少なくありません。
今回ご紹介したように、受水槽の内面ライニング工事を行うことで、水槽内部の防水性・耐久性が向上し、水質の安定や漏水リスクの低減が実現します。

さらに、ポンプユニットや配管、電気設備を同時に更新することで、給水設備全体の信頼性が飛躍的に向上します。

今回の工事で実現できたこと

  • 25m³×2槽+11.5m³×2槽というコンクリート製受水槽を、内面ライニングで再生
  • ポンプユニットを最新モデルへ更新し、水圧・省エネ・静音性が向上
  • 動力・電極・監視設備・配管・照明・換気まで、ポンプ室を総合的にリニューアル
  • 建物全体の“水の安心”を長期的に確保できるインフラ環境を構築

受水槽とポンプは単体ではなく、建物の水インフラとして互いに補完しあう設備です。どちらか一方だけの更新では効果が限定的ですが、今回のように総合的に見直すことで、安定した給水・維持管理のしやすさ・長寿命化を一度に実現できます。

受水槽やポンプ設備に不安がある管理者さまへ

 

  • 最近ポンプの音が大きくなった
  • 水槽内部の汚れや劣化が気になる
  • 20年以上使っていて一度も更新していない
  • 水質検査が通るか不安
  • 建物全体の給水設備を見直したい

こうしたお悩みがあれば、早めの点検がトラブル予防の第一歩です。

ミヨシテックでは、受水槽防水工事・ポンプユニット更新・電気設備工事・配管更新まで、建物の給水設備をワンストップで対応できます。

現地調査から更新計画のご提案まで、お気軽にお問い合わせください。